愚者の街

愚者の街 (集英社文庫)愚者の街 (集英社文庫)

by G-Tools


(223頁より引用)
「生きのびたいんだろう?」
「自分の運を試してえ。いままで、人の運にへばり付いてただけだ」
「生き延びても、逮捕されるかもな」
「逃げるさ。そこまでが、運試しだ」
[感想]
男である。
男しか解らない心情と友情を、酒と煙草と暴力とカーチェイスと粋な小物で描き出している小説だ。女は男の理想化された情婦でありながら、不条理な行動で男を破滅に導く。人生は闘いであり舞台上で、際どく、大胆に、そして繊細に演じられている。
北方謙三を読むたびに思うのは「ずるい」「羨ましい」という事だ。
また、そのリズム感溢れる文体は、途中で止まることなく、最後まで一気に読ませるものがある。現にこの感想も北方風になっている。
北方作品全体に通じるテーマは友情であり「裏切らないこと」あると思う。そのために最終的に破滅に陥ったとしても、スッキリとした読後感を得られる。
私は仁侠映画への造詣はないが、観客は恐らく、同じような爽快感に近い何かを感じるのではないだろうか。
本作では、老犬シリーズの高樹警部が出てくるのも北方ファンにとって嬉しいものだろう。高樹警部のセリフも、特に老犬シリーズを読んだ人間にとっては嬉しいものであり、ニヤリとさせられる所もある。
北方謙三の作品は、「何か考えさせられる所」とか「道徳的な暗喩」を求める人には内容が理解できないと思うのだが、スピード感・カッコよさ・安心感(水戸黄門と同じ安心感)の3点で、他に追随を許さない何かを持っており、個人的には本当に大好きである。
私の場合、この作家がいないと、とっても困る。下手なTV番組を見てるよりも、遥かに楽しいから。
[情報]
ISBN4-19-891910-0
北方謙三
徳間文庫
Wikipedia北方謙三
北方謙三 水滸伝:::嗚呼もうすぐ10巻出るねぇ。。。これでようやく読める。。。
北方謙三に訊け!:::相変わらず物凄い人生相談w