姑獲鳥の夏

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)

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(25頁目より引用)
「意識こそが重要だ。君がつまらん小説を読むのも、この壺を見るのも、はたまた存在しない幽霊を見るのも、意識あってこそだ」
「また解らんことをいう。心と脳は別々でその他にまだ意識が別にあるのかい?」
「世界は二つに分けられる」
「何だって?」
〜〜中略〜〜
「つまり人間の内に開かれた世界と、この外の世界だ。〜〜後略〜〜

(32頁目より引用)
座敷は急に暗くなった。
「仮想現実と現実の区分は自分では絶対につけられないんだよ。関口君。いや、君が関口君である保証すらないのだ。君を取り囲む凡ての世界が幽霊のようにまやかしである可能性はそうでない可能性と全く同じにあるんだ。」
「それじゃあまるで、僕が幽霊のようなものじゃないか!」



[感想]
京極堂シリーズの第一作。
「この世には不思議なことなど何もないのだよ」という言葉はあまりにも有名だ。
本作は関口の視点で描かれているが、京極堂・榎木津・木場修・中善寺敦子・青木・里村等の主要な人物がいろいろ出てきて楽しい。
物語はウブメ・姑獲鳥に関する民間伝承や古伝、鳥山石燕の画図百器徒然袋などを元に、薀蓄深い考察を積み重ねてゆくのだが、上記引用部分(が本シリーズに共通したテーマであると思う。)に基づいた結果で決着がつく。
登場人物も特徴的で、京極堂や榎木津などはファンも多いだろうが、関口や木場修の身近さも同調できる。また本作では久遠寺一族の各人物のキャラクターも立っていると思う。
ボリュームの割に一気に読めてしまう爽快さ。内容の重さに係らず思考停止に陥らない文章のリズム。
京極堂シリーズの最初の1冊としてはオススメである。

[情報]
ISBN4-06-181798-1
京極夏彦
講談社
Wikipedia姑獲鳥の夏
Wikipedia京極夏彦

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